【メキシコシティ観光】コヨアカン半日モデルプラン|フリーダ・カーロの青い家と市場グルメ 

※本記事はNexlyインターン生による執筆記事です。学生ライターの等身大の視点で、現地でのリアルな体験をお届けします!

コヨアカンの午後を歩く——フリーダ・カーロが愛した街の“色”

メキシコのかつての偉大な画家フリーダ・カーロが愛した街、コヨアカン。

Uberのドライバーに礼を言い降り立つと、道の向こうに有名な「青い家」が見えた¹。スマートフォンの画面が示す時刻は12時05分。正午を知らせる数字が、強烈な空腹感を呼び覚ます。大した目的を持っていなかった僕はとりあえず飲食店を探すため、街の中心地へと歩を進めることにした。

赤、青、黄色、緑――色とりどりの洋服が空中にひしめき合うアーケードを抜ける。

パラソルの下では、乾ききらない絵の具が陽光を受けてきらめき、不可思議な形の抽象画から写実的な絵まで、キャンバスに造り出された絵はみんな仲良く肩を寄せあっている。その姿はただじっと買い手に選ばれるのを待っているようだった。 数歩進むだけで景色はがらりと変わり、土産物のざわめきが音楽に変わり、人の歩調もまた違う。まるでいくつもの街が折り重なって存在しているかのようで、僕はただただ圧倒される。 木々の枝の隙間から覗く空は、灰色でも青でもない、白銀に光っていた。その下で揺れる葉や人々の声が、不思議なリズムを刻み、きっとそういう”多彩さ”がこの街、コヨアカンの色でありパーツなのだ。

青い家(Casa Azul)を横目に始まる散策

突然視界が開け、赤い外壁を持つ「コヨアカン市場(Mercado de Coyoacán)」が姿を現した²。建物の近くを歩いていると、チョリソーの焼ける香ばしい匂いが鼻先をかすめる。その匂いに誘われるように歩を進めていると、「¡Pásele, joven!(さあ、中へどうぞ!)」という威勢の良い声に呼び止められた⁶。僕は声と匂いに惹きつけられるようにその店の中へと吸い込まれていく。店に入り、入り口に一番近い席に腰を下ろす。ここは「ビリア」という煮込み肉のタコスが名物らしい³

僕が迷ったメニューは大きく分けて二つある。煮込みをスープとして味わうPlato de birriaと、チーズと共にトルティーヤで焼いたQuesabirria。どちらも一皿70ペソほどから楽しめる。

スープ派?チーズ派?2つのビリア食べ比べ

Plato de birria(スープスタイルのビリア)

深い皿から立ちのぼる湯気とともに、スパイスの香りが広がる。スープは辛味と旨味のバランスが絶妙で、煮込まれた肉は驚くほど柔らかい。刻んだ玉ねぎのシャキッとした食感がアクセントになり、最後はトルティーヤですくって食べれば、ライムの酸味が加わって爽やかに締めくくれる。


Quesabirria(チーズ入りビリアタコス)

手に取ると、チーズがとろりと伸びる。表面はこんがりと焼き上がり、肉とチーズの旨味が一口ごとに広がる。ライムを絞れば濃厚さが和らぎ、後味が爽やかになって食べやすい。

気づけば時計は13時10分を指していた。絶品のビルリアに舌鼓を打ったものの、行列で思ったより時間を費やしてしまった。しかし、この街で試したいものがもう一つある。インターネットで偶然見つけた、メキシコ古来の醸造酒「プルケ」だ⁴

プルケ初体験——NATURAL vs AGUA MIEL

市場の喧騒から少し離れた閑静な通りに、そのDr. Pulque Coyoacánはあった⁴。開かれたドアの向こうへ、期待を胸に足を踏み入れる。 「¡Bienvenido!(ようこそ!)」と、笑顔の店員に迎えられ、まばらに客がいる店内の奥へと進み席に着いた。

メニューに目をやると、見慣れないスペイン語の単語がずらりと並んでいる。メキシコでは料理の写真がほとんど掲載されていないため、初めての人にはわかりにくい。日本なら写真を見れば文字が読めなくても料理の内容や価格がすぐに理解できるが、ここではそうはいかない。ただ、店によっては英語のメニュー表が用意されている場合もある。そんな中で「Pulque(プルケ)」の文字を見つけた。選べるのは、伝統的な 「NATURAL」 と蜂蜜を加えた 「AGUA MIEL」。価格はノーマルが40ペソ、蜂蜜入りが50ペソだった。プルケ初体験なら、蜂蜜の甘みが独特の酸味をやわらげてくれる「AGUA MIEL」から試すのがよいだろう。

NATURAL(ナチュラル)
やや酸味が強く、とろみのある独特の口当たり。発酵飲料らしい風味をしっかりと楽しめる。

AGUA MIEL(蜂蜜入り)
軽い口当たりで酸味が穏やか。蜂蜜のやさしい甘みが加わり、初心者にも飲みやすい一杯。
初めて挑戦するなら、酸味がまろやかになる「AGUA MIEL」がおすすめだ。

窓の外では、時折通り過ぎる車が凸凹の石造りの道路を走りづらそうに走行していた。プルケの酸味の余韻を感じながらぼんやりと外を眺めていると、不意に、すぐ近くから日本語が聞こえる。

「もしかして、日本人の方ですか?」

・・・!?

偶然の出会い

声の主は、旅慣れた雰囲気のお兄さんだった。まさかこんな場所で同郷の人に出会うとは。驚きながらも頷くと、彼は花が咲くような笑顔を見せ、隣の席に腰を下ろす。 全く大したものだと思う。世界一分厚い装甲を最も簡単にこじ開け、人見知りの僕と仲良くなってしまうのだから。世界中を旅している彼が語る世界各地での冒険譚は、非常に刺激的であり魅力的だった。何より、危険な体験すら笑いと教訓に変えてしまう彼のユーモアセンスには、日本の狭い価値観に晒され干からびた僕のマインドが息を吹き返すには十分だろう。話が弾むうち、彼が「とっておきの場所がある」と、私を誘ってくれた。

UNAM中央図書館の壁画に圧倒される(世界遺産のキャンパス)

彼に案内されるままUberに乗り、向かった先はメキシコ国立自治大学(UNAM)⁵。 車を降りた瞬間、目に飛び込んできたのは、あまりにも巨大な壁画で覆われた建物だった。 世界遺産にも登録されている中央図書館だ。遠目からは建物の全側面が数万個もの色鮮やかな天然石モザイクのようなもので埋め尽くされ、メキシコの歴史と文化が壮大なスケールで描かれているように見える。その圧倒的な存在感に、ただ息をのむ。「一体、どうやってこれを作ったんだろう?」という素朴な疑問が、無意識に頭に浮かんだ。

広大な敷地をさらに進む。ダビド・アルファロ・シケイロスの立体的な壁画が印象的な学長棟の前では、アカデミックガウンをまとった学生たちが家族や友人と記念撮影をしていた。どうやら偶然、卒業式の日だったようだ。
祝祭の喧騒と、心に刻む旅の記憶

卒業式に出会う——祝祭の喧騒

階段を下ると、熱を帯びた石が靴底から伝わってくる。建物の影に入ると、ひんやりとした空気が心地よい。

巨大な壁画に近づくほど、それは単なる“柄”ではなく、一つ一つの石が意志を持つ“地形”のように感じられた。中央図書館に別れを告げ、アカデミックガウンを着た集団の近くへと足を運ぶ。その熱源へ近づくにつれ、人々の歓声と陽気な音楽が空間を満たしていった。角帽とガウンの群れ、名前を呼ぶ声、乾いた拍手、舞い上がる紙吹雪。近くの屋台で買ったジュースを飲むと、ほどよい酸味が暑さを和らげてくれるようだった。

少し時間が経ってから、僕たちは広場に戻り、もう一度、図書館の壁画を見上げる。首が痛くなるほどに見上げ、ふと視線を水平に戻すと、赤い地面と流れる雲、そして祝祭に沸く人々の影が、一枚の絵のように美しく並んでいた。 思いがけない出会いが連れてきてくれた、思いがけない景色。偶然の卒業式のざわめきも、今日の旅の大切な一場面として心にしまう。少しずつオレンジ色に染まり始めた空を眺めながら、この豊かな一日に静かに感謝した。

基本情報まとめ(営業時間・価格・場所など)

¹ ■ 「青い家」ことフリーダ・カーロ博物館(Casa Azul)
  • 正式名・場所:Museo Frida Kahlo(Londres 247, Col. Del Carmen, Coyoacán)。月曜休館/火・木〜日 10:00–18:00、水 11:00–18:00
  • チケット:窓口販売なし(オンラインのみ)/一般320ペソ。メキシコ在住者160ペソなど割引あり。混雑回避は午前の時間指定が◎。
  • アクセス:メトロ3号線 Coyoacán駅から徒歩約16–20分。配車アプリ併用で楽。
² ■ コヨアカン市場(Mercado de Coyoacán)で食べるなら
  • 所在地・時間:Ignacio Allende s/n(デル・カルメン)。概ね 7:00–18:00の営業が目安。
  • 名物屋台:「Tostadas de Coyoacán」(市場内)。11:00–18:00、トスターダは1枚〜60ペソ前後(具材次第)。行列回避は14時前。
  • 初心者ポイント:屋台で「¿Con todo?(全部のせでいい?)」と聞かれたら、初回は“Sí”で。ライムを絞ると脂が軽くなる。
³ ■ 物語に登場する「ビリア」の相場感
  • 市場や屋台の目安:一皿70ペソ前後〜(盛りや店で上下)。レストランだと100〜180ペソ台も一般的。
  • 選び方:迷ったら**Quesabirria(チーズ入り)が食べやすい。Plato de birriaはコンソメ(出汁)**につけて食べると旨味が立つ(ライム+刻み玉ねぎで輪郭UP)。
⁴ ■プルケ専門店「Dr. Pulque Coyoacán」
  • 店名・場所:Dr. Pulque Coyoacán(メキシコシティ・コヨアカン地区、フリーダ・カーロ美術館やVilla Coyoacán市場から徒歩圏内)。営業時間は公式Google MapsやSNSで要確認。
  • 価格の目安(プルケ):小グラスで40〜50ペソ前後(フレーバーによる)。蜂蜜入りから挑戦すると飲みやすい。
  • 基礎知識:プルケのアルコール度数は約2〜7%。ややとろみがあり独特の酸味が特徴。初心者は甘めのフレーバー、通好みならナチュラルを試すと◎。
⁵ ■ UNAM(メキシコ国立自治大学)中央図書館の壁画
  • 見どころ:フアン・オゴルマン作の石モザイクが四面を覆う象徴建築。2007年にユネスコ世界遺産に登録。
  • アクセス:メトロ3号線「Universidad」→ 無料循環バス「Pumabús」で学長棟/Islas方面へ。平日6:00–22:00、土日は系統により運行。
  • 初心者ポイント:石畳の照り返しが強いので、帽子・水・日焼け止めは必携。夕方の斜光は写真がきれい。

《ワンフレーズ集(現地でそのまま使える)》

⁶ 「¡Pásele, joven!(パーセレ、ホーベン!)」=「どうぞ、いらっしゃい!」
² 「¿Con todo?(コン・トード?)」=「全部のせでいい?」→「Sí, por favor.(お願いします)」でOK。
⁴ 「Curado de miel(クラード・デ・ミエル)」=蜂蜜風味のプルケ。まろやかで初心者向け。


※ 営業時間・価格は変動します。来店当日の公式サイト/SNSで最新情報を確認してください。

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